千葉の鍼灸便り

大学病院・民間病院で勤務している鍼灸師のブログ。日本中に病鍼連携(病院と鍼灸の連携)を広めることを目的としている。

未承認漢方薬販売の問題について

こんにちは

 

昨日、未承認の漢方薬を販売したとして、漢方薬局の店主が書類送検されるニュースが掲載されました。

「コロナに効果」承認ない漢方薬販売の疑い 薬剤師を書類送検 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

 

複数のニュースを読むと、以下の4つの点が取り上げられています。

 

1、未承認漢方薬を自分で調合して、販売した。

 

2、「新型コロナウイルス抑制効果がある」という効果をうたった

 

3、未承認漢方薬の内容が、本来の処方とは内容が一部違った。

 

4、一部がカビが発生していたり、管理が悪かった。

 

さて、何が問題なのでしょうか?

 

このままニュースを読むと、漢方薬って怖いものの様に書かれてしまっているので、そこら辺を解説していきたいと思います。

 

まず、1「未承認漢方薬を自分で調合して、販売した。」に関して

 

薬局では、日本国内で使用が認められた薬品以外は売れない決まりがあります。

漢方薬に入っている生薬の中には、生姜(しょうが)や棗、シナモンなどの食品も含まれていますが、薬として販売する場合は生姜(しょうきょう)、大棗、桂枝と名前が変わり、品質も保証されたものになります。

なので、薬は食品として売ることはできません。(もちろん、食品を薬として販売することもできません)

漢方には、中国では使用されているものの、日本国内で承認されていない生薬は複数あります。(承認されない理由は、毒性だけでなく、希少性や研究が不十分など様々な理由があります)

 

今回の場合、販売した薬剤に、日本では未承認の生薬が含まれた薬を販売したことが、違法となっています。

 

ちなみに、病院で漢方の専門医が処方する場合、未承認の生薬を使用することは違法ではありません。(もちろん条件やルールもありますし、届け出る必要がある場合もあります。未承認薬を医師が使用するのは漢方だけでなく、がんや難病などでは利用されています)

 

薬局で漢方薬を買う場合は、医師の処方箋か、ちゃんとしたメーカーが作った既製品に関しては心配する必要はありません。(漢方医を受診することを私は推奨しますが、自分で漢方を選ぶ場合は体質や症状に合ったものを選びましょう。)

 

 

次に「2、「新型コロナウイルス抑制効果がある」という効果をうたった」ですが

 

「静肺排毒湯」が、中国でコロナ患者に対して処方され、有効であったとする報告は実際にあります。

以前このブログでも紹介しました。

ただ、今回の場合は本来の処方と内容が異なるという事も書かれているので、「コロナに効果がある」と書いて売るのは、法律違反です。(この辺の広告の仕方は、医薬品はかなり厳しいので、仮に効果があるとしても、表記の仕方次第では違法になります)

また、国内で新型コロナウイルスに有効かどうかの判定は行われていないので、日本人に対して本当に有効かどうかは不明です。

(私としては、一部の漢方薬の成分は新型コロナウイルスの予防や、症状の緩和に有効であると思いますが、結論付ける報告は今のところ持ってはいません。効果がないとも証明されていないので、研究が出てくるのを楽しみにしています)

 

 

「3、未承認漢方薬の内容が、本来の処方とは内容が一部違った。」

 

擁護するわけではありませんが、基本的に漢方薬は患者さんに合わせて内容を変化させること(加減と言います)は、一般的に行われるもので、本来の処方通り生薬が含まれていないからダメというのはちょっとおかしいと思います。

 

今回の場合は、患者さんを診察して処方を決めたわけではないので、「内容が違うことを説明しないで」販売している場合は、内容を誤認させる行為だと思います。

 

処方した場合は、処方箋に内容量が記載されますので、心配ありません。

(大きな変更がある場合は医師から説明があると思います)

 

 

「4、一部がカビが発生していたり、管理が悪かった。」

 

漢方薬は、もともと植物などの天然物を乾燥させたものが多いので、管理が悪いと、カビたりします。

薬局の品質管理の問題ですね。

 

こちらも擁護するわけではありませんが、カビや細菌に関しては乾物は発生する可能性が十分にあり得るものです(なので、ものによっては防腐剤や殺菌薬が添加されています)

自宅で管理する場合は、対策と、古いものは使わないように気を付けましょう。

(薬局は最大限の品質管理努力は必要だと、私も思います。しかし、実際に飲む我々も、知識と管理はちゃんと行って、安全に漢方薬を使用することも大切なことだと思います)

 

 

雑記ですが、今回は「医薬品」という、厳しく管理する法律があるから取り締まられたものです。

どこのだれが作ったかよくわからない「サプリ」や「食品」は、医薬品よりもさらにチェックがルーズです。

安易に広告だけで商品は選ばず、しっかりと調べて選ぶことが大切だと思います。

 

特に口に入るものですから、これを機会に見直してみてはいかがでしょうか。